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理工学振興会会報 ソフィア サイテック No.12
2001年4月発行


ただいま研究中


物理学科(2001年当時、現機能創造理工学科)
新しい基底状態を見つける夢
助教授(2001年当時) 後藤 貴行


 超伝導や磁気転移など、物質が低温で引き起こす 多くの奇妙な現象は、すべて物質の中の電子の 働きによるものです。私の研究室ではNMR(核磁気共鳴) という実験手段を使って、物質の中の電子が作る磁場を 直接「見る」ことで、これらの現象が極低温で発生する メカニズムを明らかにしようとしています。

NMRは原子核の持つ小さな磁気モーメントと磁場の 相互作用とちょうど等しいエネルギーを持った電磁波を 照射し、核スピンが反転する周波数を調べることで 物質内部の磁場の値を測ることが出来るというものです。

 私の主な研究対象は、高温超伝導体や低次元量子 磁性体ですが、最近、特にその中でも「スピンギャップ」 と呼ばれる状態に着目しています。この状態では系の 低次元性と強い量子スピンゆらぎのために、いくら温度を 下げてもスピンは揺れ動き、秩序状態に到達しません。 この状態にスピンギャップを潰すような強い磁場を 加えると、今まで知られていないスピンの状態が 出現するのではないかと言われています。この未知の 状態をNMRを使って検出しようとしています。

 金属を絶対零度近傍まで冷却した時の基底状態は、 意外なことにこれまで僅か数種類知られているに 過ぎません。すなわちフェルミ流体、磁気秩序状態、 超伝導の三つであり、この三つが現代文明と科学技術を 根底から支えて来たと言っても過言ではありません。 物理学にとって「次のジェネレーション」に向けての 基礎研究は、スピンギャップを始めとしたさらに 新しい未知の基底状態の探索に尽きます。それも、 超伝導を凌ぐようなインパクトのある基底状態で なければなりません。もちろん、そのような新しい 基底状態は、一朝一夕に見つかるものではありませんが、 私はそういう夢を描いて研究を進めています。



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