Motivation, anxiety and emotion in second language acquisition.
MacIntyre, P. D.

Peter Robinson (ed.) (2002).
Individual Differences and Instructed Language Learning. (pp.45-68)

What is motivation?

(1) なぜ人間はある特定の目標に向かって行動しようとするのか?
(2) 何によって目標をめざす強さや努力の量が決定されるのか?
(3) なぜ、まったく同じ環境にある人々の中でも方向性や強さが異なるのか?
85年のガードナーのsocio-educational modelが動機づけのモデルとして成功したのは、以上の3点に答えることができたからである。以下にGardnerによるsocio-educational モデルとその批判を紹介する。

Motivation in the socio-educational model: Gardnerとその批判
Gardner (85)
学習者が動機づけられている(motivated)といえるには下の4つの要素が必要である。
 1)goal(目標)    2)目標を達成したいという願望    3) 積極的な態度    4) 努力
Gardnerは、これらの要素を'情意的変数'とよび、知能や適性などの認知的産物とは区別している。

Gardner and MacIntyre (1992) のモデル

@社会文化的環境  A認知、情意の個人差に影響を与える。
情意面…態度(attitude)、動機(motivation)、言語不安(language anxiety)、自信(self-confidence)
認知面…知能(intelligence)、言語適性(aptitude)、ストラテジー(learning strategy)
Gardnerとその主唱者たちは、特にこの個人差の中でも情意面に焦点をあてて研究をしてきた。

特に、AMTB(Attitudes/Motivation Test Battery)で測定するintegrative motive(統合的動機付け)に焦点をあてていた。

※ 統合的動機づけ(instrumental motive) は、以下のcomponentより構成されている。
  1) attitudes toward the learning situation,
  2)integrativeness:TLグループの人との社会的インターアクションへの興味、学習状況への態度等
  3)motivation 

B 言語学習のコンテクスト 認知的変数も情意的変数も、両方の言語コンテクストに影響を与える。
Formal situation…直接的な言語指導が与えられる教室などの状況
Informal situation…学習が偶発的に起こる状況

C Outcome    : 言語的outcomeは、さらに非言語的なものへも影響を与える。
  例: 話せるようになったので(skill)、さらにやる気が起こる(motivation)
言語的  …スキル、言語知識, 言語能力(language competence)など
非言語的…態度(attitude)やmotivationなど

Gardnerのsocio-educational modelへの3つの批判

@ Crookes and Schumidt (1991)

あまりにもGardnerのモデルが主流になってしまっていて、他の視点からの動機付けへのアプローチが軽視されてしまっているとして批判を加えた。

◆より広い視点からのアプローチ
Giles and Byrne (1982)のSpeech accommodation 理論、Schumann(1978) の文化変容モデル、
Krashen (1985) のモニター理論を導入した。

◆心理学における、Keller (1983) のモデルを引用した。
【motivationを決定する4つの要素】 
1.Interest 2.Relevance 3.Expectancy   4.Outcome

◆これらより、MotivationとSL learningの関係を、以下4つのレベルから考察した。
1.ミクロレベル: motivationがL2 inputの認知処理に与える影響
2.教室レベル: 教室内でのテクニックやアクティビティに影響
3.シラバスレベル: 学ぶ内容の選択。生徒の興味を喚起できる内容かどうかで動機も変化する
4.教室外のinformal なレベル
《欠点》 関連する様々な変数の複雑な関係について、明示的に考察を加えることなく、どちらかというと洞察や推測の域を出ないまま論を展開していってしまった。
 
A Dornyei (1994) Gardnerと同様に、統合的動機づけと道具的動機づけについて区別をしている。

◆L2 motivationの要素をさらに発展させて細分定義している。心理学や教育学における動機についての文献を概観し、motivationの下記3レベルの枠組を提唱した。
1.言語レベル:  統合的・道具的motivationで定義されている概念。
2.学習者レベル: 達成欲求や自信などの個人差
3.学習状況レベル: (a) course-specific (b) teacher-specific (c) group-speciic

「3.学習レベル」が特にsocio-educational modelでは欠けているとして、これを特に強調した。
《欠点》 新しい枠組も加えて、結果的にGardnerの理論を包摂する形になったが、それぞれの要素、アイデアについてさらに詳細な検証が必要とされている。

B Oxford and Shearin (1994)

◆学習者のmotivationを概観できるに至っていないのには、以下の4条件が阻害しているからである。
1."motivation"の定義が一貫していない
2.Second language環境とForeign language環境
3.その他の重要な変数がまだ見過ごされている
4.教師が学習者の真の動機を理解していない

◆言語に関連あるmotivational variablesをまとめた。
need theory, expectancy-value理論、equity理論、reinforcement理論、さらにsocial-cognitive conceptを足し、self-efficacyとreward satisfactionを扱った。

⇒MacIntyre(著者)の一連の批判に対してのコメント
様々な批判や新たなモデルが生まれているが一致をみていない。経験的リサーチがまだ欠けている。

◆MacIntyre (2001)
Gardnerのモデル(10 concepts)、Pinrrich et al. (1991)のacademic motivationのモデル(6 concepts)、Kuhl et al. (1994)のaction controlモデル(3 concepts)、McCroskey et al. (1991)のcommunication-related variablrs (3 concepts) を総合して、因子分析を行った。

【3つの因子】
@ attitudinal motivation (態度に関連する要素)
A self-confidence  :(不安や、コミュニケーション能力についての自分自身の評価)
B action motivation  
※この3因子すべてに、"willingness to communicate"が関連していた。
@「態度」とBの「実際の行動」はやはり異なる因子であり、態度から行動へいかに関連づけていくかというのが課題である。ここで、"willingness to communicate"が両方に関連しているという点が示唆に富んでいる。

The need for empirical research

実際の研究では、これまで説明してきたような理論で想定されるよりも複雑で矛盾するような結果が出ることがある。それは、他にもホメオスタシス(恒常性)のような原理がmotivationの分野にも働いているからである。関連する研究分野を以下に3つ挙げる。

The hidden cost of reward ("overjustification effect")
外的報酬を与えることによって、逆に学習者に内在するintrinsic motivationを低下させることがある。
e.g. "テストに出るから覚えなさい"等のinstrumental goalを強調してしまうことで、
   学習者自身が本来もっていた、純粋な言語へのmotivationを損なう恐れがある。

Opponent theory
当初は快だったものが不快になったり、不快なものが快の感情に変わるなど、恒常性(Homeostasis)の原理で説明される現象。適応範囲に限界はあるものの、motivationの理論でも見すごせない。

Reactance theory
強制されればしたくなくなり、禁止されればしたくなる、等に代表される現象。ある行動の結果の決定に関与できず、できず、さらにそのoutcomeが重要であればあるほど、コントロールを取り戻そうと必死になる。これが昂じて、"learned helplessness"の状態になってしまうこともある。

Emotion as motivation

感情は、人間の行動のintensity, urgency, energyに対して増幅力を与えるものとして機能している。動機づけの研究分野ではあまりに軽視されているが、感情は、神経生理学的にも説明できる重要な変数である。
◆理性(reason)と感情(emotion)の関係
⇒Epstein (1994)のcognitive-Expriential Self Theory
論理性や分析的思考を司る"rational system"と、無意識のレベルで起こる細やかな感情の面をつかさどる
"experiential system" は別個に存在していて、、後者の認知や行動に影響を及ぼす。
motivationが保証されるには、態度だけでは不充分であり、それにemotionが伴う必要がある。

言語不安(language anxiety)

言語不安については、Gardnerのsocio-educational modelでも含められていたが、一貫した位置づけがされていないというのが現状である。
不安とL2 proficiencyについての関係、また因果関係の方向性(不安だからうまくできないのか、うまくできないから不安になるのか)は重要かつ中心的問題である。。

不安についてのこれまでの研究分野を以下に挙げる。
Academic
不安と言語コースでの成績は負の相関がある。
例: MacIntyre and Gardner (1994)では、フランス語のコースと不安にr=.65という相関があった。

Cognitive
不安によって認知的プロセス(thinking, reasoning)に影響が与えられる。
しかし、中庸レベルの不安に頻繁に対処し続けることによって、それがだんだん努力につながっていくという実証もある。それは、不安の機能が逆U字型であるというMacIntyre (1999)にあてはまる。
正に作用する不安はよりよいperformanceにつながり、その結果努力も向上する。一方、負に作用する不安はこれと全く逆の結果をもたらす。

Social
不安がsocialな面に影響を与えると、学習者はコミュニケーションしようとしなくなる。
そして、このようにコミュニケーションを避けようとすることによって、様々な負のsocial perceptionが生まれる。
◆ Clement (1986) : majority と minority groupでは、不安の知覚が異なるということである。  →言語不安はEFLとESL環境では異なるのではないか

Personal
言語学習をしている時、自分自身が何もできない赤ん坊、もしくは自分は頭が悪いのではないか思えてきてしまう、という報告がされている。このような経験はトラウマ的なものでもあり、自尊心を損なうものにもなりうる。
言語と文化とアイデンティティーの三者は非常に強いつながりがあるので、言語学習をすることによってこのように強い感情が発生する。 しかし、不安の強い学習者は自分のproficiencyについて実際よりも低い評価をしてしまい、これがself-fulfilling prophecy(できないと思いこむことで、現実にもできなくなってしまう)となってしまう危険性も含んでいる。

結論
言語学習はmotivated behaviorであり、学習者によっては、それは上下するものであるということを見てきた。もし言語学習が恒常性をもつとしたら、興味深い研究がこれより先に生まれる可能性があるだろう。

(塚本敦子)