Social work practiceのモデルには、クライエントとの契約を重視するthe contract model(契約モデル)と契約にとらわれず最大限クライエントを援助するthe covenant model(誓約モデル)がある。私の教育活動は「契約モデル」をとりたい。なぜなら、いまの大学の教育システムでは「誓約モデル」は、教員への教育活動以外の義務(研究義務および社会実践義務)があるために実際的ではないと思われるからである。
社会福祉は、学問としてもたいへん興味深いものである。その興味深さ、面白さを講義で伝え、それを卒業後も独力で学んでいくだけの原理的なこと(視点や考えかたなど)を身につけてもらうことが大事だと思う。かつては、私も「これは社会福祉従事者には常識になっている制度だから、授業でも伝えておこう」と思い、そのことについて話したことがある。しかし、心のなかでは「実際は無駄な制度ではないか」と思っていた。「でも、これについては話さなければならないだろう。卒業してから『地域福祉論の講義で学ばなかったの?』と聞かれて、学生たちが恥をかいてはいけないから」と思い、講義をしていた。そんなときは講義に力が入らないし、話している私が「つまらないことだ」と思っているのだから、聴いている学生たちが面白いと感じるはずがない。その制度の重要性がわからないというのは私の教員としての限界であり、その限界を素直に認めようと思う。そして、その限界を超えたことを私は講義では行わない。限界を超えたことはできないからである。いいかえれば、わからないことをわかったような顔をして講義しないということでもある。