ジャーナリズム特殊II 2005 調査と選挙報道  
毎週木曜日 1・2時限 (9:15〜10:50) 教室 3−171教室(旧コンピュータルームD)
コーディネーター: 鈴木雄雅 新聞学科 専門科目  2単位

更新 2006/02/25
 提出レポートの講評について(全員ではありません)教員のコメントがあります。確認・希望のかたは 

講義概要  マス・メディアは様々な調査を行っているが、本講義はその概要と選挙にかかわる調査の実態と分析を行い、新聞、放送分野で選挙報道に携わっているジャーナリストが講義を行う。
 理論と現実の両面を提示しつつ、受講生になぜ世論調査が行われ(この場合比較的選挙に関することが中心)、それがどのように報じられ、世論形成に影響や効果をもたらすか、を理解してもらうことが、主たる授業目的である。
 ジャーナリズム論、報道論、メディア論の基礎講義を受講していることが好ましい。

評価基準 出席状況(30%)、レポート(70%) その他(アサイメント、授業内態度など) 詳細はこちら


第1回 10月6日 オリエンテーション
選挙報道の効果・影響に関するマスコミ理論
鈴木雄雅福田充 (日本大学 新聞学科)
第2回 10月13日 選挙報道の内容分析研究とその手法 福田 充
第3回 10月20日 選挙に関するアンケート調査 福田 充
第4回 10月27日 選挙報道の実態 神志名 泰裕 (NHK 解説委員室)
第5回 11月10日 無党派層の投票行動・分析 神志名 泰裕
第6回 11月17日 政治報道と世論 神志名 泰裕
第7回 11月24日 民放の選挙特番の製作現場 平井 文夫 (フジテレビジョン 報道局)
第8回 12月1日 出口調査と議席予測 平井 文夫
第9回 12月8日 選挙報道の今後 平井 文夫
第10回 12月15日 新聞と世論調査 石井 富士男 (毎日新聞 紙面審査委員会)
第11回 12月22日 世論調査:質問、回答 石井 富士男
第12回 1月5日 世論調査:ケーススタディ 石井 富士男
第13回 1月12日 総 括 鈴木



授業のポイント

第1回 10月6日 オリエンテーション  選挙報道の効果・影響に関するマスコミ理論
第2回 10月13日 選挙報道の内容分析研究とその手法
第3回 10月20日 選挙に関するアンケート調査
第4回 10月27日 選挙報道の実態
△「当選確実」はどう打つのか。△「選挙予測」はどのように行うのか。記者による情勢取材、 世論調査、出口調査、開票取材などをどのように組み合わせて行うのか。特に世論調査は当たるのかどうか、「世論調査の信頼性」の問題をどう見たらいいのか。△「選挙報道の基本姿勢」をどう考えるか。新聞、放送でも民放とNHKとでは違いがある。今回の衆議院選挙を含めて、主に報道・取材現場から見た選挙報道の実態とあり方を概論として取り上げる予定です。
第5回 11月10日 無党派層の投票行動・分析
△無党派層とは、どういう人たちが多く、どんな特徴があるのか。△これまでの国政選挙で、無党派層はどのような投票行動をとったのか。政治的には、どのような思考志向傾向があるのか。△無党派層が増えてきた背景は、何か。以上のような点を中心に先の衆議院選挙の世論調査、出口調査を基に多角的に分析したいと考えています。
第6回 11月17日 政治報道と世論
△政党・政治家の選挙への対応、政治資金など投入の仕方の変化。△今回の巨大与党が誕生した先の衆議院選挙を世論の側は、どう受け止めているのか。衆議院選挙の追跡世論調査結果を基に考えたい。△また選挙後の政局の動きとメディアの政治報道のあり方、世論を政治に反映させるのには、どういう取り組みが必要なのかといった点を取り上げる予定です。
第7回 11月24日 民放の選挙特番の製作現場
投票締切の20時直前に始まる民放の選挙特番について製作者の立場から意義や問題点を解説する。視聴率や予算など民間放送であるが故の「制約」を抱える中で政治的公正さを確保しつつ、選挙結果を早く正確に伝えるためにどのような努力が行われているか説明する。民放の選挙特番に対し「当確の早撃ち合戦」「バラエティー化」などの批判もある。最近では20時に出す議席予測の精度に関心が強まっており、実質的にこの段階で政治の流れが決まってしまう傾向がある。選挙報道における民放の果たす役割を考察する。
第8回 12月1日 出口調査と議席予測
前回2003年の衆院選では出口調査による議席予測をTV各局が間違えて自民を低く、民主を高く予測しすぎた。このため20時直後には民主党が勝ちムードになってしまい、公明党に連立を呼びかけるなど「誤報による間違った政局」を作り出してしまった。出口調査の集計ミスなども手伝って出口調査に対する信頼が大きく揺らいだ選挙であった。議席予測はなぜ間違ったのか?この2003年衆院選の出口調査と議席予測で何が起きたのか解説する。
第9回 12月8日 選挙報道の今後
出口調査による議席予測のミスは日本だけではない。米国大統領選は2000年に「ゴア勝利」と誤報を打ってしまったため2004年の選挙では慎重にならざるを得ず、当確が遅れて、間の抜けた番組になってしまった。韓国でも総選挙で予測が当たらず政治問題化している。日本ではその後2004年の参院選、2005年の衆院選と予測は当たっている。出口調査と議席予測について今後どう考えていくべきなのか。民放の選挙報道の今後を考察する。
Drudge Report http://www.drudgereport.com
第10回 12月15日 新聞と世論調査
 新聞紙上には、連日のように各種の「調査もの」が掲載されている。あるものは新聞社が独自に実施した世論調査であったり、アンケート調査であったりするが、例えば、内閣府が実施する世論調査や様々な会社が実施する各種調査など、「そのほかの調査」も多く含まれている。ところが、新聞社内においてさえ、世論調査とアンケート調査の区別ができず、日々の紙面にも間違った報道がまかり通っているというのが実情である。
 まず、第1には、これらの「調査もの」についての基本的な見方を伝えたい。そのうえで、これまで新聞社が行ってきた世論調査の調査方法の変遷や今後の見通しなどについても簡単に説明したい。
 この中で、選挙時に新聞社が実施する各種調査−−いわゆる世論調査だけでなく、出口調査、モニター調査、トレンド調査など−−について、その具体的な実施方法や問題点などについて説明したい。
第11回 12月22日 世論調査:質問、回答
 12月15日の講義では、世論調査を実施する際に、「調査対象者の選定=サンプリング」が正しく行われているか否かが大切である、ということをお話ししましたが、第2回目の講義では、質問の仕方、回答の選択肢のあり方といった具体的な話をしたいと考えています。
 朝日新聞社内での質問を巡る喧嘩騒ぎについて話しましたが、世論調査では@質問は可能な限り簡潔にA回答を誘導するような質問の仕方は避けるB回答の選択肢も賛否を問うなど、簡潔なものが望ましい−−といった鉄則があります。
 @Bについては、言うまでもなく、現在の電話での調査では、いきなり知らない相手(調査実施者サイド)から電話を受けることになるうえ、質問や回答そのものが複雑では、当初は調査を承諾していた調査対象者が途中で拒否に転じてしまうということもあり得ます。
 また、Aの回答誘導的な質問であれば、調査そのものの信頼性に疑問が生じる恐れもあるからです。とくに、選挙に関する世論調査では、これらに気を遣うことは当然のことです。
宿 題 以下の各項目について調査質問(肢)を作成しなさい。各項目についてはA4判1枚ずつにいくつでも記述しても構わない

@靖国神社に代わる国立追悼施設調査書見送り  A前原民主党代表の中国脅威論
B防衛庁の「省」昇格                    C消費税の引き上げ問題
第12回 1月5日 世論調査:ケーススタディ
実際に調査を行うということを想定して、質問と回答をそれぞれに作成してもらいたい、と考えています。調査内容については現時点では決めていませんが、第2回講義の最後に課題として提案し、第3回講義の前に私の手元に届くようにしていただきたいと考えています。質問は当然のこととして時事問題中心にしたいと思っています。これからどういう課題にするか考えますが、日々の新聞やテレビニュースに気をつけていてください。それらの中から、適当に4〜5問を作ってもらうことになります。
第13回 1月12日 総括 世論調査 講義概要

課題
次のなかからひとつ選び、指定日までに2部提出のこと。

福  田 選挙前にマスコミが実施する選挙関連世論調査によって発生するアナウンスメント効果について
神志名 「選挙報道の実状」を分析するとともに「テレビ政治時代の選挙報道のあり方」について、 論述せよ。
選挙結果に大きな影響力を及ぼす「無党派層の投票行動」を分析した上で、「これからの選挙報道のあり方」について、論述せよ。
平 井 民放の選挙特番の問題点(選挙報道の問題点)
2005年衆院選における小泉首相のメディア戦略
石 井 世論調査で質問・回答を作る際の留意すべき点はなにか。 できるだけ具体的に述べよ。

□書式 A4判 縦紙 横書き 40字×45行  3,000字程度 2部提出
□表紙は必要ない。書き方は下記に準じること。
□参考にした文献やサイト名(アクセス日)も必ず書いてください。
締切日及び提出場所 1月27日(金) 13:00 7号館4F 鈴木研究室(不在時はドアの投函ボックスへ)
 +α 1枚 授業を終えての感想(エッセースタイル)
  2部は各ホチキス左上部とめ + エッセーをクリップでワンセットにて提出願います。

レポートの書き方お助け
レポート、アサイメント提出の基本  2002年版
レポート、アサイメント提出の基本  2002年版 pdf
レポート、アサイメント提出の基本  2002年版 (pdf 圧縮)


Reading Reference】

谷藤悦史『現代メディアと政治』(一藝社、2005)

J・カペラ、K・H・ジェイミソン『政治報道とシニシズム』(ミネルヴァ書房、2005)
「検証 9・11総選挙」『新聞研究』No.652 (2005/11)
「政権とメディア」『新聞研究』No.653(2005/12)
『放送研究と調査』 各回 世論調査

J.レストン、名倉礼子(訳)『新聞と政治の対決』(鹿島研究所出版会、1967)
佐々木 伸『ホワイトハウスとメディア』(中公新書1071、1992)
下山 進『アメリカ・ジャーナリズム』(丸善ライブラリー146、1995)
M.マコームズ ほか、大石裕(訳)『ニュース・メディアと世論』(関西大学出版部、1994)
石澤 靖治 『大統領とメディア』(文藝春秋新書、2001)
田原総一朗 『メディアと権力とのカラクリ』(アスコム社、2005)

田勢 康弘 『政治ジャーナリズムの罪と罰』(新潮社、1994、新潮文庫版あり)
        『メディアと政治−日米メディア・ダイアローグ』(明石書店、1999)
長谷川倫子 「政治とマス・メディア」春原・武市 『ゼミナール 日本のマス・メディア【第2版】』(第5章第2節、日本評論社、2004)

谷藤悦史+大石裕(編訳)『リーディングス 政治コミュニケーション』(一藝社、2002)