第5回 主要な政治アクター(2) 軍   4月25日(木) 1.政治の主役としての軍 □ クーデターによる政権交代:「政党-選挙」ではなく「軍-クーデター」 ・クーデター(coup d’Etat、golpe de Estado)とは、  「国家機構内の一部勢力によって起こされる非合法的政権奪取」 ・クーデターの過程:  実行~軍事評議会(junta militar)による統治~憲法体制への復帰(新憲法、選挙) ・例外(メキシコ、キューバ、コスタリカ) □ 機能による分類: ・宮廷型クーデター(支配層内の単なる派閥争い) ・秩序回復型クーデター(社会秩序が不安定化した場合に秩序を回復) ・反動型クーデター(改革勢力を弾圧・排除) ・改革型クーデター(保守勢力を押さえ改革を実施) 2.軍の役割:歴史的変遷 (1) 政治介入の伝統 ・独立後、カウディーリョ(caudillo)の私兵団による国家権力の争奪戦  →宮廷型クーデター ・国軍への再編:「憲法体制の擁護者」としての特別な地位、既得権益の保護  →秩序回復型クーデター (2) 改革勢力としての軍 ・政治運動としてのポピュリズム(人民主義)[1930年代~]  *カリスマ指導者、中間層・都市労働者の支持、民族主義、階級同盟 ・革新的軍人指導者による「改革型クーデター」と「ポピュリスト型権威主義体制」  ブラジル(1930~45):J・ヴァルガス  アルゼンチン(1943~55):J・D・ペロン  ペルー(1968~75)、J・ベラスコ  エクアドル(1972~75)、G・ロドリゲス=ララ (3) 保守勢力としての軍 ・冷戦期の「国家安全保障ドクトリン」(反共+経済開発) ・保守派軍人が内外の資本家やテクノクラート(技術官僚)と連携  「反動型クーデター」と「軍部官僚型権威主義体制」[1960年代~]  ブラジル(1964~85)  アルゼンチン(1966~73、76~83)  チリ(1973~90)  ウルグアイ(1973~85) (4) 民主化後の軍 ・政治からの撤退[1980年代~] ・課題としての再介入防止、文民統制の徹底 ・新たな役割としての麻薬対策