第28回 民主化後のメキシコ政治(2) 連邦制  7月18日(木) 1.革命党体制下の連邦制 □ 1917年憲法の規定 =分権的 ・31州:独自の憲法、知事の直接選挙・議会選挙 →ミニ大統領制  州知事に強い権限、ただし再選不可  州議会に重要な権限(憲法改正には3分の2の州議会の賛成が必要) ・1連邦特別区(=メキシコ市):市長を連邦政府が任命 →閣僚扱い □ 一党支配時代の運用 =中央集権的 ・州知事は事実上大統領が指名、革命党の候補が必ず当選 ・州議会の過半数は革命党が確保 →連邦政府(革命党)の意思がすべての州で貫徹 2.民主化以後の連邦制と州政治 □ 民主化期:州政治における野党の進出 ・PRIの独占~初の野党州知事(1989バハカリフォルニア州-PAN)  ~増加(91グアナフアト州-PAN、92チワワ州-PAN・・) ・大統領による州政治への介入の減少 ・メキシコ市長公選制導入(97)、野党PRDの勝利 ・主要3党(PRI、PAN、PRD)による州政権の奪い合い □ PAN(国民行動党)政権の州(10) [バハカリフォルニア、南バハカリフォルニア、チワワ、ドゥランゴ、タマウリパス、グアナフアト、ケレタロ、アグアスカリエンテス、ナヤリト、ユカタン] ・伝統的な地盤は北部・中北部。所得水準が高く、敬虔なカトリック信者の多い地域 ・PANの政権運営 *中道右派(経済自由主義、政治的民主主義)  クリーンな政治、地道な政権運営、保守的な文化社会政策 □ PRD(民主革命党)/MORENA(国民刷新運動)*政権の州(6) [メキシコ市*、ミチョアカン、ベラクルス*、タバスコ*、キンタナロー、チアパス*] ・支持基盤はメキシコ市と中南部  メキシコ市:革命党分裂以来、都市労働者や知識人からの強い支持  ミチョアカン州:3代に渡ってカルデナス家から州知事 ・PRDの政権運営 *中道左派(分配政策、民族主義)  分配政策と大衆路線、党内対立と内紛 □ PRI(制度革命党)政権の州(11) [コアウィラ、ソノラ、シナロア、サカテカス、コリマ、サンルイスポトシ、イダルゴ、メキシコ、ゲレロ、オアハカ、トラスカラ] ・支持基盤は地方全般、全国に張り巡らされた地方組織、近年は後退傾向 ・PRIの政権運営  パトロン=クライアント関係を用いた保守的政権運営  権威主義的政治文化の強い州が少なくない →「権威主義の飛び地」(民主化とともに中央政府の介入が減ったことで、州知事の自立性が高まり、権威主義的支配が維持・強化された地域) □ その他(5) [カンペチェ、ハリスコ、モレロス、プエブラ、ヌエボレオン] 3.まとめと展望 □ 開放されるメキシコの地域的多様性 □ 地方の自律性増大にともなう課題 ・中央の民主化と地方の権威主義化 ・自治権と市民権の原理上の衝突