第30回 民主化後のメキシコ政治(3) 展望―対米関係を中心に―   7月25日(木) 1.国際関係の中軸としての対米関係 □ 歴史的な二律背反的対米観 ・理想としての米国(植民地からの独立、共和制、大統領制、連邦制) ・侵略者としてのアメリカ(北部領土の喪失、米資本による経済支配) □ 革命国家の対米政策 ・反米的要素としての経済ナショナリズム(石油国有化、外資規制、輸入代替工業化) ・防御的要素としての外交における非干渉主義、小国としての自己認識 ・決着点としての両国間の対立回避と政治的不干渉 2.墨米関係の緊密化 □ 経済面 ・1980年代以降の経済自由化(民営化、規制緩和、自由貿易促進) ・米国との市場統合(NAFTA、1994)と貿易依存率の増大 *米国側:雇用を奪われることへの不安 □ 社会面 ・米国留学の増加 ・米国とのビジネス ・米国への移民(非合法、合法)増大、統制不可能な国境 →米国居住経験者の比率増大 →言語能力・価値観の変容(bilingual、bicultural)、二つの故郷 *米国側:拡大するヒスパニック(消費者、納税者、福祉の受益者)のインパクト □ 政治面 ・親米のPRI政権(1988~2000、2012~2018年)、PAN政権(2000~2012年)  反米(?)のMORENA政権(2018年~) ・在米選挙民への対応(在外投票制度、米国での事実上の選挙運動) *米国側:選挙民としてのヒスパニックの存在感 □ 変容するアイデンティティー ・エリート・民衆両レベルでの意識変化 →非排他的アイデンティティー? *米国側:メキシコ化するアメリカ(言語、文化、生活風景) 3.他地域との関係 □ 国際場裏における存在感:G20の一員 □ ラテンアメリカの中での位置づけ:北米化? □ アジアとの関係:中国との競争