法科大学院では、判例集(小泉直樹ほか『ケースブック知的財産法』[第3版、弘文堂]+特許判例百選+著作権判例百選)を使って判例を勉強していきます。判例を勉強するとは、以下のことを考えてもらうことを意味します。すなわち、



1.その判例が定立した規範はどのようなものか
2.定立された規範は当該事実関係に対してどのようにあてはめられたか、鍵となった事実関係は何か
3.事実関係を異にする関連事件についてその規範はどこまで適用可能か(判例の射程)
4.そもそも判例の定立した規範は妥当なものだったか、他の解決法はなかったか



です。



いきなり判例を勉強しますので、事前に基本的な法概念を教科書で勉強してもらわないといけません。色々な教科書がありますが、講師からどれを使えと強制はしません。自分に合ったものを選べばよいと思います。



上智大学法科大学院創立時からずっと双方向の授業、つまりソクラティック・メソッドをやってきましたが、どうも知財でこれをやるのは限界があるように(2012年ころから)思えてきました。みなさん(学生諸氏)は、はっきりいって間違えることの天才です笑。法律学に正答はもとより存在しませんが、それでも明白な間違いというものはあります。ソクラティック・メソッドをしていて、みなさんが手ごたえのある回答をしてくれることは、滅多にありません。逆に「よくそんな独創的な間違え方をするなあ、あなたの間違い方の独創性に脱帽!」みたいなことが少なくないです。そして間違いを指摘すると、みなさんのモチベーションを下げてしまいます。これは精神衛生上よくありません。



ですので、授業ではほとんど講師の説明に終始するかと思います。ただ、質問したいことがあったらどんどん質問してください。



質問のなかでも、みなさん、実にヘンテコなことを言っていることが多いのですが笑(私も自分がよくわからない分野では似たようなもんでしょう)、質問すれば理解の不十分なところがはっきりするかと思います。



そして私は次のように強く思うのです・・・間違いを犯すというのは定型的な思考に凝り固まっていない証拠でもあります。みなさんの「間違った思考」から、私自身にとって非常に有益な示唆というか発想を得ることが少なくありません。あっこんな物の見方があったのか、みたいな。



なお、私は早稲田大学LLMで「Copyright Law in Japan」(英語の授業、外国人の学生さん向け)の非常勤講師もしています。